Classiques japonais avec furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lisez 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 262 100 caractères · 523 écrans
足はドンドン加速度になって、またたくうちに外神田から鎌倉河岸――評定所のある辰の口和田倉門はもうすぐそこだ。
「春が来たぜ、春が来たぜ! お濠の柳が芽を吹いてら! 丸の内へも渡り鳥がやってきたぜ! 三本鳥毛の槍先にチラチラ蝶々が舞っている。――こういう春は毎年だが、この万吉には十一年目で、やッと巡りめぐってきた春なんだ! なんだか今年はすてきもねえいいことがありそうだ。時節到来、時節到来」
かれの心が、こう叫んだ。
実際今の万吉は、春の鳥のように軽快だ、前途に耀々たる曙光がある。まだ深い話を弦之丞から打ち明けられていないが、この御上書を辰の口の目安箱へ投げ入れてこいというからには、ほぼ想像のつく内容――すなわち、急転直下に、いや急転直上に、阿波の内密、公卿浪人の策動、甲賀世阿弥のことなど、すべてを箇条書きにして、将軍家の御覧に達し、そして? そして? さアその先は万吉には分らないが、なにか、いい吉兆のある気がする。
まもなく外濠、和田倉御門。
評定所はその筋向いにみえる。
「おお、あれだな」
と万吉、スタスタと門前へ寄って行った。
厳めしい冠木門から奥まった式台まで、ズーと細かい玉川砂利が敷きつめてある。