Classiques japonais avec furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lisez 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 262 100 caractères · 523 écrans
そして、その駕と提灯に添ってゆく中の一人が、足をとめて、こッちをふりかえったかと思うと、チリチリと火縄の粉を赤く散らして、ドーン! と短銃の関金を引き放した。
「あッ!」
後の者は三方に飛び別れて、思わず大地へ身をうッ伏せる。
そしてまた身を起こそうとすると、しばらくの間隔をおいて、さらに凄じい三ツ目の弾がうなってくる。
そのまに、先の駕と人数と提灯とは、前へゆくお綱や万吉の姿をも引っくるんで、無二無三に、桐畑の坊主林を走りぬけ、どこへともなく急ぎに急いだ。
虎口をのがれたお綱と万吉も、それが、誰の人数か、提灯の印が何かも気がつかずに、一本道のつづく限り、その人々の中にまぎれて走ったが、やがて、下谷の四ツ目の辻新堀端まできた時に、ヒョイと道を交わそうとすると、
「万吉、もう少し先まで」
と、短銃を持った侍が言った。
何を問うまもなく、ふたたび駈けだした駕と人数は、堀端の施行小屋の前から横道へそれて、佐竹ッ原の野中へグングンと入って行った。
朧夜ほどの空明りもないが、若草の匂いがどことなく漂って、わらじにふむ露湿りの感じも、夜ながら春らしい。
「もうこの辺でよかろうから、駕を下ろしてお待ち申そう」