Classiques japonais avec furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lisez 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 262 100 caractères · 523 écrans
そのためにお綱はまた、つかい残りの小粒まで、洗いざらいフリ撒いてしまった。
だが――お綱の目でみると、人通りの多い東海道、路銀はどこにでも転がっている。
で、どこまでも触れこみ通り、金に大様で通でお侠な札差の娘――という容子になりすまし、仲居を相手に、美食のあとの茶漬好み、枝豆かなにかでお別れの一合をチビチビと飲んでいる。
と、茶店の外で一服すっていた駕かきが、
「あっ、いけねえ――」と、藤棚のほうをのぞいて声をかけた。
「舞妓さん、舞妓さん。早くカルタを片づけてしまいなせえ。あいにくと向うから、お役人らしい侍が大勢こッちへ来るようですから」
「大丈夫よ……」
和蘭陀カルタに気をとられている舞妓の組は、それに耳もかさないで、床几の周りにたかっていた。
「大丈夫じゃねえ、往来からみえる所で、そんな物をいじッていると、きっとガリを食うにきまっていら」
「だって、お菓子をかけているのだもの、お役人様が見たって叱りはしないわ」
「おや、またはじまっているのかえ」
お綱もこっちで苦笑したが、何か思いだしたように、
「あのカルタは、私が長崎からもってきて、舞妓さんたちに教えたのだけれど、もし後でお咎めでもあるといけないから、こっちへ返して貰いたいね」