Classiques japonais avec furigana
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あだこ
あだこ
山本 周五郎
Lisez あだこ de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 22 762 caractères · 46 écrans
半三郎は頷いた。
「じゃあ、まんま、――御飯はどうなさるんですか、仕出し屋から取るんでなければ、わが、あたしがお米やなにか買って来て、御膳の支度をしますけれど」
「いらない」と半三郎が云った、「なにもいらない、放っといてくれ」
そして彼は眼をつむり、ふと気がついて、いったいおまえは誰だと訊こうとしたが、そこにはもう女はいなかった。彼は頭をあげて座敷の中を眺めまわし、女がどこにもいないのを認めると、寝返りをうって眼をつむった。こんどは夢もみずに眠りこんだが、やがてまた女の声で呼び起こされた。
「起きて下さい旦那さま」と彼女は耳のそばで云った、「まんま、――御膳ができましたから起きて下さい、旦那さま」
半三郎は眼をあけた、「なんだ、おまえまだいたのか」
「御膳ができました」と云って、彼女は微笑した。黒い顔の中で、きれいな白い歯が見えた、「塩引と菜っ葉の汁だけですけれど、どうか起きてめしあがって下さい」
炊きたての飯のあまいかおりと、魚を焼いた脂っこい匂いとが、彼をひっ掴み、抵抗しがたい力で彼を絞めあげた。彼はめまいにおそわれたような気持で、なにを考える暇もなく起きあがった。