Classiques japonais avec furigana
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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
Lisez いやな感じ (いやなかんじ) de 高見 順 (たかみじゅん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 292 113 caractères · 587 écrans
「じゃ、いやがらない」
妙に悲しそうに波子は言って、
「二人でどこかへ逃げましょう。あたしんところへ来た人に頼んで見てもいいわね。たしか、矢萩さんとかいう人だったわ」
「矢萩……?」
大きな声で言った。どうして波子のことを知ったのだろう。
「接吻して」
と波子は目をつぶってささやいた。波子の身体は小刻みに震えていた。
「お客さまとマージャンでここへは来てても、あたし、絶対に……こんなこと、初めてなの。男の人とこんな……」
波子はコチジロ(処女)だった。ビリナオ(娼婦)しか知らなかった俺が初めて処女を知った。このことが俺の心に与えたものは喜びというよりは狼狽だった。波子はてっきり男をもう知っているものとばかり思っていたのに、そうじゃなかったという狼狽? 俺の狼狽というのは、そんな種類の狼狽じゃない。そんなことで狼狽する俺ではない。
トシバラシ(人殺し)も俺をこんなふうに狼狽させはしなかったのだ。そんな俺をこんなふうに狼狽させるもの、それを実はひそかに自分で俺はもとめていた。そしてそれがいま俺に与えられたのだ。ということをこの狼狽は俺に告げる。この狼狽によって俺はそういうことに気づかせられた。