Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

このにぎりめし

この握りめし

岸田 国士

Lisez この握りめし (このにぎりめし) de 岸田 国士 (きしだくにお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 13 649 caractères · 27 écrans

Aozora Bunko

七

脈はたしかに打つている。念のために、首筋へ手を突つ込んでみると、まだ体温もある。雪明りへ顔を向け直そうとすると、眉がぴりぴりと動き、唇がかすかに物言いたげにふるえた。まだ四十そこそことみえる行商風の旅慣れた恰好からいつても、たゞの行路病者でなく、なにか急病の発作としか思えなかつた。

「どこが悪いんだ、え、物が言えんのか」

連れて来た青年と二人で、近所の農家まででも運ぼうと相談しているところへ、岡本弘が、襟巻の一端を風になびかせながら駈けて来た。彼は、いきなり、やつと横向けにしたばかりの男の顔に自分の顔を近づけて、呼吸をたしかめ、やがて、ふところから取り出した大きな握り飯を、その鼻先へ突きつけた。その男は、しばらく喉をごくごくいわせていたが、やつと、それこそ、精いつぱいの努力で、口をあんぐりと開いた。まさしく、極度の空腹のために、歩く力を失つていたのである。

七

翌朝、その旅の男は、元気なすがたで駐在所に近い愛仙閤という旅館を発つて行つた。増田健次は、しかし、型通りの戸籍調べをしたにはしたのだが、別段、自分がなにをそれ以上にしたか、報告に綴るほどのことはなにもしていないのに気がついた。