Classiques japonais avec furigana
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ちくしょうだに
ちくしょう谷
山本 周五郎
Lisez ちくしょう谷 (ちくしょうだに) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 69 788 caractères · 138 écrans
三月十七日に、江戸から隼人への返書があった。彼はそれを読むとすぐに、教頭の横淵十九郎を訪ねて自分の望みをうちあけた。横淵はおどろいたようすで、隼人の顔を暫く見まもっていたが、やがて、任期が終ったら道場へ戻るか、と訊き、隼人がそのつもりだと答えると、ではそうするがよいと承諾した。――老臣に達しのあったのは十九日で、その日の午後、明日登城するように、と重職から使いがあり、家へ帰ると小池帯刀が待っていた。彼は怒ったような顔つきで、向うへゆこうと云い、すぐに隼人の住居のほうへいった。
「あした城中へ呼ばれるが」と帯刀は坐るのももどかしげに云った、「どういうお沙汰があるかわかっているか」
隼人はうんといった。
「辞退するだろうな」と帯刀が訊いた。
隼人は首を振った。
「辞退しない」と帯刀が云った、「お沙汰は山の木戸の番頭だぞ」
「おれが殿に願い出たんだ」
帯刀は口笛でも吹くように口をすぼめ、それをぐっと一文字にしながら、尖った眼つきで隼人を睨んだ。
「めあては西沢だな」
「いや」と隼人は首を振った。
「改めて云うが、番頭は辞退してくれ」と帯刀が云った、「朝田家はお咎めを受けているが、押して道場の助教に採用してもらった、その義理を考えても、いまの席をはなれることはできない筈だぞ」