Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ちくしょうだに

ちくしょう谷

山本 周五郎

Lisez ちくしょう谷 (ちくしょうだに) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 69 788 caractères · 138 écrans

Aozora Bunko

隼人は二三のことを頼んで、まもなく老人に別れを告げた。

道へ出ると岡村七郎兵衛が待ってい、隼人は村を見廻ってから、木戸へ帰った。その途中で、七郎兵衛が「権八は戻っているらしい」と云った。あやを送っていったとき、あやの母親から聞いたのだそうで、唖者娘のいちが、ときどき夜なかになにか持って出てゆく、それが喰べ物らしいので、たぶん権八のところへ届けるのだろう、ということであった。

「それはおかしい」と隼人が云った、「あの娘は誰とも知れぬ男の子をみごもって、権八に鞭で打たれたんだ、それが権八に喰べ物を届けるだろうか」

「幾たびも云うようですが、私は去年の七月から木戸にいます、その点では朝田さんより先輩ですからね」と岡村は気取って、思わせぶりな口調で云った、「ここでは、常識で考えられる以外のことなら、どんなことでもおこりかねませんよ」

「おれはいい先輩を持ったらしいな」

「ついでに云っておきましょう」と岡村が急にまじめな顔で云った、「――あやという娘に気をつけて下さい」

隼人は立停って彼に振向いた。

「なに、格別どうということはありません」岡村は肩をゆりあげ、こんどはとぼけたように云った、「ただあの娘が、たいそう貴方に御執心であり、これは相当に危険だということを」