Classiques japonais avec furigana
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わかむらさき
わか紫
泉 鏡花
Lisez わか紫 (わかむらさき) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 37 708 caractères · 75 écrans
そこから角に折れ曲って、向うへ渡る長廊下。両方壁の突当は、梯子壇の上口、新しい欄干が見えて、仄に明がついている。此方に水に光を帯びた冷い影の映るのは一面の姿見で、向い合って、流しがある。手桶を、ぼた――ぼた――雫の音。寂として、谷の筧の趣あり。雲山岫に湧くごとく、白気件の欄干を籠めて、薄くむらむらと靉靆くのは、そこから下りる地の底なる蒸風呂の、煉瓦を漏れ出る湯気である。
して、音なく閉め、一足運びざまに身を反した、燈火を背にすると、影になって暗さがました、塗枕の置かれたる、その身の閨のふちを伝うて、膨らかな夜具の裳、羽織の袖が畳に落ちると、片膝を軽くついた。
手を上に載せて、斜めに差覗くようにして、
「お出な。」
むッくり下から掻い上げ、押出すようにするりと半身、夜具の紅裏牡丹花の、咲乱れたる花片に、裙を包んだ美女あり。
いかなる状にや結いにけむ、手絡の切も、結んだるあとの縺もありながら、黒髪はらりと肩に乱れて、狂える獅子の鬣した、俯伏なのが起返る。顔には桃の露を帯び、眉に柳の雫をかけて、しっとりと汗ばんだが、その時ずッと座を開けて、再び燈を蔽うて住った、夫人を見つつ恍惚と、目を円らかに瞻った、胸にぶらりと手帳の括に、鉛筆の色の紫を、太白の糸で結んで、時計のように掛けたのは、総六の娘お鶴。