Classiques japonais avec furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Lisez キャラコさん de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 9 452 caractères · 19 écrans
明け放した硝子扉の向うは、ゆるい起伏のある丘で、はるか遠いその稜線のうえに、中世紀の城のような白い家がぽつんとひとつ立っている。
部屋のなかは、濃い褐色と黒っぽい藍色のなかに沈んでいるのに、外景には三鞭酒色の明るい光が氾濫している。夏の、あのはげしさはなく、しっとりと落ち着いた調子がある。窓のそばに、燃えるような雁来紅があるので、秋の中ごろの午後の風景だということがわかる。
一体にクラシックな画風で、日暦の日づけや草の葉の細かい葉脈まで克明に描いてあり、襞の深い丸い丘や城のような建物の背景のぐあいは、ちょうど、『モナ・リザ』の、あの幻想的な遠景とよく似ている。
だいたい、こんなふうな絵である。格別、どこといって奇抜なところもなければ、目をそばだたせるようなところもない。狭い画面のなかに、いろいろなものが押し並んでいるので、むしろわずらわしくさえ感じられる。
キャラコさんは、飾窓に鼻をおっつけながら、ゆっくりとその絵を鑑賞する。
芸術的な価値はともかく、なにしろ、そんなふうに手のこんだ絵なので、飾り皿の微小画を眺めるほどの面白さはたしかにある。それらと同じように、この絵のなかにも、たぶんいろいろなものが隠れているのに違いない。