Classiques japonais avec furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Lisez キャラコさん de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 17 819 caractères · 36 écrans
このひとがと思われるような熱狂のしかたで、花束を持って、毎日のように利江子さんを訪問して、二ヵ月足らずでとうとう攻め落としてしまったのです。
波動力学の計算ならば、だれよりも正確にやってのけるという久世氏なんですが、家庭設計の基礎算出のほうはあまりお上手ではなかったと見えます。
それこそ、ちょうど火と水ほども性格のちがうご夫婦だったのです。久世氏のほうは、すこし一徹なところのある、ちょっと例のないほど几帳面な、腹の底からの技術家で、朝の珈琲から夜のパイプの時間まで、紙型にとったようにキチンと割り切ってあるというふうなのに、利江子夫人のほうは、時間観念欠乏症の代表のような方で、自分の下着の始末さえ満足にできないようなとりとめのない性質なのです。
ひる近くまで、ぐったりと寝台の中に沈んでいて、夕方になると、急に生々して男のお友達を大勢誘って遊びに出かける。「毎晩、どこかで音楽会があって、むかしのつきあいで、どうにも断わり切れないのよ」というのですって。
久世氏は事務所から帰ると、女中の給仕で、ひとりで味気のない食事をなさらなければなりません。でも、沈着なかたですし、その時、もうボクさんも生まれていたので、こんな忌々しい生活を五年も辛抱していらしたのですが、そのころ、久世氏はひとりの女性に出逢いました。