Classiques japonais avec furigana
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シベリヤにちかく
シベリヤに近く
里村 欣三
Lisez シベリヤに近く (シベリヤにちかく) de 里村 欣三 (さとむらきんぞう) en japonais avec furigana. JLPT N1. Touchez un mot pour le sens.
N1 · avancé · kanji et kana modernes · 5 803 caractères · 12 écrans
一
一
「うむ、それから」
と興に乗じた隊長は斜な陽を、刃疵のある片頬に浴びながら、あぶみを踏んで一膝のり出した。すると鞍を揉まれたので、勘違いして跳ね出そうとした乗馬に「ど、どとッ、畜生」と、手綱をしめておいて、隊長は含み笑いに淫猥な歯をむいて
「それから」
と、飽くまで追及して来た。
軍属の高村は、ひとあし踏み出して乱れた隊長の乗馬に、自分の馬首を追い縋って並べ立てながら
「は」
と、答えておいて、あ、は、は、は、はッと酒肥りのした太腹を破ってふき出した。
「隊長殿。これ以上には何んとも」
彼は恐縮したように、まだ笑いやまない腹を苦し気に、片手の手綱をはずして押えた。
「何故じゃ、高村」
「は、そう開き直られますと、猶更もって…………」
隊長はちょっと不快な顔をした。「軍人はだ。昔しから野暮なもんと相場がきまっとる。徹底するところまで聞かんことには」
「お気に召しましたか?」
ふいに隊長は濶達に、日焦けのした顔を半分口にして笑いたてた。
「あ、は、は、はッ」
チリ箒のような口髯が、口唇の左右一杯にのびて、それが青空に勇ましく逆立った。
乗馬が、ぽかぽかと土煙をあげた。