Classiques japonais avec furigana
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セトナおうじ(かだい)
セトナ皇子(仮題)
Lisez セトナ皇子(仮題) (セトナおうじ(かだい)) de Nakajima Atsushi (中島 敦) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 1 733 caractères · 4 écrans
メムフィスなるプタの神殿に仕うる書記生兼図案家、常にウシマレス大王に変らざる忠誠を捧ぐる臣、メリテンサ。謹んで之を記す。この物語の真実なることを、あかしし給う神々の御名は、鷹神ハトル、鶴神トト、狼神アヌビス、乳房豊かなる河馬神アピトエリス。
百合の国上埃及の王にして、蜂の国下埃及の王、アモン・ラーの化身、輝けるテーベの主、ウシマレス大王の一子セトナ皇子は、夙に聡慧の誉れが高い。八歳の時、彼は神々の系譜を論じて宮廷の博士共を驚かせた。十五歳以後は、最早あらゆる魔術と呪文とに通じた博学の大賢者として天の下に並ぶものもない。
一日、古書を渉猟中、ふと、ある疑いにとらわれた。今迄、全然考えたこともなかった疑だけに、初めは、邪神セットの誘惑ではないかと思って、それを斥けようとした。しかし、其の疑は執拗に彼の心から離れなかった。ニイルの川の源から、その水の流れ注ぐ大海に至る迄の間に、セトナ王子のしらないことは何一つ無い筈である。地上の事に限らず、死後の世界に就いても、彼程、通暁している者はない。冥府の構造から、オシリス神の審判の順序から、神々の性行から、オシリス宮の七つの広間、二十一の塔の間やその守衛者の名前迄悉く誦んじている。