Classiques japonais avec furigana
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ノンシャランどうちゅうき
ノンシャラン道中記
久生 十蘭
Lisez ノンシャラン道中記 (ノンシャランどうちゅうき) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 13 137 caractères · 26 écrans
飛入台付、大筏の上にいたスポオティング・クラブの面々も、口々に「いずれ後刻」といいながら、どぶん、どぶんと海に飛び込んで昼飯めがけて泳いで行ってしまった。筏の上に残ったのは三人の半狂人、いうまでもなく、公爵、タヌならびにコン吉の組合せだけ。
籠手をかざして眺むれば、キャンヌの町を囲むレステレエルの山の斜面の裾から頭頂まで、無数に散在する粋で高尚な荘館と別荘――その間では、いまや霞のような巴旦杏の花盛り、暖い太陽の下では枝もたわわに檸檬が色づき、背景には雪の山頂をきらめかすアルプスの連峰、コルクと松の木の生えたサント・オノラの朱色の岩は、紫紺色の海にその容脚を浸し、はるかなる水天一髪の海上には鴎のごとくに浮ぶ一艘の三檣帆船――さながら夢のようなる春景色、和やかな日射しにほどよく暖められたコン吉の脳髄は、そろそろと睡気を催したとみえ、どうやら混沌たる状態になって来たので、
「どうもうっとりするほどいい心持ですね、見れば公爵も、筏の上で船を漕いでいられる様子、われわれもひとつ、今日は、社交も昼餐も抜きにして、ゆっくりとここで昼寝をしてはどうでしょう。これが社交疲れというのかして、掌は痛むし、首筋は腫れるし、胃袋もどうやら紅茶臭くなっているようだ、その他の部分も少し休養させなくては護謨が伸びてしまう」