Classiques japonais avec furigana
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パノラマとうきだん
パノラマ島綺譚
江戸川 乱歩
Lisez パノラマ島綺譚 (パノラマとうきだん) de 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 78 920 caractères · 153 écrans
「千代子、千代子、何もそんなに心配することはないのだよ。私はこの通り、身も心もすこやかな、今まで通りの源三郎なのだ。さあ、さあ泣くのをよして、いつもの可愛い笑い顔を見せておくれ」
彼は、ふとそんなことを口走り相になるのを、やっとの思いで食いしめて、そしらぬ振りで、狸寐入りをしていなければならぬのです。この様な不思議な立場は、流石の廣介も、嘗て予期しない所でした。
それは兎も角、彼は予定の筋書きに従って、四五日目頃から、極めて巧みなお芝居によって、少しずつ、口を利き始め、激動の為に一時麻痺していた神経が、徐々に目覚めて来る有様を、ごく自然に演じて行きました。その方法は、数日の間床の中にいて、見たり聞いたりしたこと、又はそれから類推し得た所丈けを、やっと思い出した体に装って、その外の、まだ探り得ない多くの点には態と触れない様にし、相手がそれを話し出すと、顔をしかめて、どうも思い出せないという風をして見せるのです。彼はこのお芝居を自然らしくする為に、予め数日の間、苦しい思いをして口をつぐんでいたのですが、それが図に当って、仮令分り切ったことを胴忘れしていても、或は話がとんちんかんになっても、人は少しも疑わず、却って彼の不幸な精神状態を、憐んで呉れる始末でした。