Classiques japonais avec furigana
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パノラマとうきだん
パノラマ島綺譚
江戸川 乱歩
Lisez パノラマ島綺譚 (パノラマとうきだん) de 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 78 920 caractères · 153 écrans
町の芸者や半玉なども数名座に侍ったのですが、彼女等もそれぞれ引取って了い、客は菰田邸に泊るものもあれば、それから又どこかへ姿を隠すものもあり、座敷は引汐の跡の様で、杯盤の乱れた中に一人酔いつぶれていたのが廣介、そして、それを介抱したのが彼の妻の千代子だったのです。
その翌朝、意外にも、七時頃にもう起き出でた廣介は、ある甘美なる追憶と、併し名状すべからざる悔恨とに、胸をとどろかせながら、幾度も躊躇したのち、跫音を盗む様にして千代子の居間へ入ったのでした。そして、そこに、青ざめて身動きもせず坐ったまま、脣をかんで、じっと空を見つめている、まるで人が違ったかと思われる、千代子の姿を発見したのです。
「千代、どうしたのだ」
彼は内心では、殆ど絶望しながら、表面は、さあらぬ体で、こう言葉をかけました。併し、半ば彼が予期していた通り、彼女は相変らず空を見つめたまま、返事をしようともせぬのです。
「千代……」
彼は再び、呼びかけようとして、ふと口をつぐみました。千代子の射る様な視線にぶつかったからです。彼は、その目を見ただけで、もう何もかも分りました。果して、彼の身体には、亡き源三郎と違った、何かの特徴があったのです。