Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ヘヤーピンいっぽん

ヘヤーピン一本

豊島 与志雄

Lisez ヘヤーピン一本 (ヘヤーピンいっぽん) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 8 246 caractères · 17 écrans

Aozora Bunko

そして二人の男をさし置いて、娘を引留めたのである。

娘は進退に窮した様子で、ちょっと腰をおちつけて、両手を握り合している。

「亡くなった人は、仕方がありませんよ。」と岩木は言った。「然しはっきり分って、来られた甲斐があったというものです。生死不明の人が、ここでもずいぶんありますからね。」

「はい。」と娘はまた言った。

久子さんは立っていって、台所から料理物を運んできた。そして娘にすすめた。

「こちらへいらっしゃいよ。疲れたでしょう。なんにもないけれど、あがって下さい。」

娘は臼のように坐りきったまま、食卓へ近寄ろうとしなかった。

「一杯いかが?」

久子さんは盃をすすめた。

「頂けません。」

「そう。ではなにか召上れよ。いま御飯も出来ますから。」

娘は黙っていたが、ふいに顔を伏せ、ハンカチを眼にあてて、泣きだしてしまった。

「どうしたの。」

久子さんが寄り添ってゆくと、娘はますます泣いた。

どうもへんだ。娘が泣きだしたことではない。すべてに於て、なにか調子が狂ったようで、どこが狂ったのか、俺にも分らない。俺はただ酒を飲んだ。

娘は突然、ぴたりと泣きやんだ。眼を拭いた。