Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Lisez ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) de 梅崎 春生 (うめざきはるお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 129 411 caractères · 263 écrans
顔がぽっとあかくなって、なんだかとたんに面白くなくなったような表情です。
それでも先ず蟹江が角道をあけ、猿沢が飛車先の歩を突いて、戦いが始まりました。両方とも黙々と口をつぐみ、しきりに駒を動かしています。駒組が変化してゆくにつれ、しだいに両者の闘志もたかまってゆくらしいのでした。ことに蟹江は肩をそびやかし、見るからに力闘という恰好になってきました。
猿沢夫人は編棒をとり出して来て、傍で編み物を始めていました。部屋の中はしんとして、駒を動かす音だけが、時々さらさらとひびくだけです。ふとその音が途絶えたので、夫人が顔を上げて見ると、猿沢佐介は困惑と口惜しさを押しかくした老獪な微笑をたたえ、じっと盤面をにらんだり、蟹江の手許に置かれた持駒をにらんだりしていました。どうも形勢が悪いらしい風でした。
やがて猿沢は、蟹江の持駒にじろりと一瞥をあたえながら、初めて低い声で言いました。
「蟹江君。君のその桂馬を、三十円で売って呉れないか」
蟹江はびっくりしたように顔を上げました。それから盤面を見渡して、何かしきりに計算している様子でしたが、しばらくして思い切ったように答えました。