Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ボロやのしゅんじゅう

ボロ家の春秋

梅崎 春生

Lisez ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) de 梅崎 春生 (うめざきはるお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 129 411 caractères · 263 écrans

Aozora Bunko

Sの背中

一

一

『猿沢佐介の背中には、きっと一つの痣がある。しかもそいつのまんなかに、縮れて黒い毛が三つ、生えているのに相違ない』

いつからか、蟹江四郎は、そう思うようになっていました。思うというより、信じるといった方がいいかも知れません。思ったり信じたりするだけではなく、時には口に出して言ってみたりさえするのです。もちろん人前でではなく、こっそりとです。七五調の新体詩みたいな調子のいい文句ですから、つい口の端に出て来やすいのでした。

ひとりで部屋でお茶を飲んでいる時とか、道を歩いている時などに、だから彼はふと呟いています。ちょいと呪文のような具合なのです。

『猿沢佐介の背中には、節穴みたいな痣がある。そしてそいつのまんなかに……』

それを呟くとき、蟹江四郎の顔はいつもやや歪み、表情もいくらか苦渋の色をたたえてくるようです。ふだんから突き出たような眼玉が、そんな時はなおのこと、ぎょろりと飛び出してくるように見えました。

しかしこの七五調仕立ての文句は、その発想において、間違っていました。それは蟹江自身もよく知っていました。本来ならば、これは次のように言うべきなのです。