Classiques japonais avec furigana
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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Lisez ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) de 梅崎 春生 (うめざきはるお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 129 411 caractères · 263 écrans
若者は興覚めた顔になりながらも、それに応じて言葉を返していた。
のれんをくぐって彼が通りへ出た時、発田の身体はびくりと動いて、一瞬凝ったように静止した。それを眼に収めると、彼は外套の襟を立て、通りを駅の方へとぼとぼと歩き出した。
(あの奇妙ないさかいは、どんな決着をつけたのだろう?)
その後も彼は時折、その情景を思い出し、そんなことを考えたりした。ああいう折れ曲った怒りが、納得できる結末をもつことを、彼は想像できなかった。彼にできることは、あの草津節の散乱する金属音を、じんじんと皮膚によみがえらせることだけであった。そして、あそこにいた発田の姿を、見ないふりして過ぎないで、わざわざ向い側の甘酒屋に入ったことは、そして発田の姿を眺めていたことは、残酷なことであったかどうか。それを考える度に、言葉になった結論が胸に浮ぶ前に、自分をひっくるめた人間人間のありかたに、彼は翳りをふくんだ深い笑いを感じた。
発田の犬はこの頃も彼の庭にしばしば現われていた。荒れた庭の唯ひとつの装飾である牡丹は、その根のところに、彼が蜆のからを一面にしきつめたから、もう犬も掘り返せなくなってしまった。