Classiques japonais avec furigana
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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Lisez ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) de 梅崎 春生 (うめざきはるお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 129 411 caractères · 263 écrans
縁側まで送りながら彼は低い声で言った。庭の夜気は妙になまぬるかった。
翌日から二三日あたたかい日がつづいた。
彼はふと思い立って、小菅刑務所に出かけることに決めた。日当りのいい縁側で、彼は鬚を剃った。鏡の中には彼の顔と、そのうしろに遠く、白木の家の破風が見えていた。白木は昨夜遅く帰ってきたらしかった。昨夜彼が寝ていると、白木の家で物音がして、女の子の声が聞えた。
「父ちゃんの酔っぱらい。酔っぱらってるよう」
それからまたがたがたと物音がした。それを聞きながら、彼は眠りに落ちた。
(負けたのかしら。それとも、勝って祝酒でも飲んだのかしら)
鏡のなかには、すべすべになった彼の顔があった。日当りのせいか、気のせいか、ひところよりも黄色さが減っているようにも思われた。彼は鏡をとりあげて、斜にしたりかざしたりして、いろんな角度から顔をうつして見た。顔のかたちはそれにしたがって、いろいろに変化した。顔の中では、耳がまだずいぶん黄色だと思ったが、それは病気のためでなく垢でよごれているのかも知れなかった。しかし自分の顔を鏡であれこれ眺めることに、彼はほのかな幸福を感じた。