Classiques japonais avec furigana
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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Lisez ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) de 梅崎 春生 (うめざきはるお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 129 411 caractères · 263 écrans
しかし資格があっても、買えるとは限らないさ」そして野呂はにやりと笑って、人差指と親指で丸い形をこさえました。「先立つものがないとねえ」
その嫌らしい笑い方が僕を激怒させた。こんりんざいこの家を野呂だけに所有させてやるものか。全力をつくして妨害してやる。そういう決心がむらむらと胸中に結実したのも当然でしょう。僕は叩きつけるように言った。
「金ならいくらでも都合する。何だい、たかが十万円ぽっち」
すると野呂は少し狼狽したようでした。僕を怒らせてはまずいと、とっさに考えたのでしょう。とたんに妥協的な態度になって、もし自分に買う権利を譲って呉れるなら、立退き料を充分に出そう、などと言い出して来ました。しかし僕はもう意地になっていたから頑として承諾しない。すると野呂は困り果てたらしく、哀願的にさえなってきました。
「ねえ。エッフェル塔から飛び降りるような気持で言うが、立退き料を四万まで出そう。四万だよ」
「イヤだ」
「四万あれば君は元が取れるじゃないか。しかもその金で他のいい部屋に引越せる。そうだろ。すこしは損得を考えてみたらどうだ」
「イヤだ」
四万円貰って立退けば、こんな身勝手なワカラズヤと同居しないで済む。