Classiques japonais avec furigana
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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Lisez ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) de 梅崎 春生 (うめざきはるお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 129 411 caractères · 263 écrans
しばらく二人の男の影は、つめたく乾いた畠土の上に、くろぐろと静止していました。長い方が猿沢の影で、短い方が蟹江の影です。やがてその短い方の影から、手の形の影がにゅっと突き出ました。
「よろしい。承知した」
蟹江がためらっていたのは、その条件を呑んで、しかも久美子に求婚を断られたら、背負わされた借金額だけまるまる損になる、その計算を考えていたからでした。すると猿沢も手をにゅっと出して、二人の掌はひたと握り合わされました。猿沢は念を押すように言いました。
「借金の方は、大丈夫払って呉れるだろうな」
「払ってやる。その代りあそこには、もう足踏みするなよ」
こうして話合いは成立したのです。つめたい夜気のなかで、瞬間蟹江は英雄的な感激をさえ覚えました。この男もなかなかいい奴だ。友達になってやってもいいな。そんなことを本気でちらと考えたりした程です。頭上の暗雲が吹き払われたような、久しぶりに晴れ晴れとした心持でした。
さて、その翌晩のことです。『すみれ』に立ち寄ってコップを傾けながら、さりげなく、猿沢の借金額を訊ねてみると、なんと一万二千円もたまっているというのです。