Classiques japonais avec furigana
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ヴィヨンのつま
ヴィヨンの妻
Lisez ヴィヨンの妻 (ヴィヨンのつま) de Dazai Osamu (太宰 治) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 56 363 caractères · 112 écrans
彼は悠然と腰から煙草入れを取り出し、そうして、その煙草入れに附属した巾著の中から、ホクチのはいっている小箱だの火打石だのを出し、カチカチやって煙管に火をつけようとするのだが、なかなかつかない。
「煙草は、ここにたくさんあるからこれを吸い給え。煙管は、めんどうくさいだろう」
と私が言うと、彼は私のほうを見て、にやりと笑い、煙草入れをしまい込み、いかにも自慢そうに、
「われわれ百姓は、こんなものを持っているのだよ。お前たちは馬鹿にするだろうが、しかし、便利なものだ。雨の降る中でも、火打石は、カチカチとやりさえすれば火が出る。こんど俺は東京へ行く時、これを持参して銀座のまんなかで、カチカチとやってやろうと思うんだ。お前ももうすぐ東京へ帰るのだろう? 遊びに行くよ。お前の家は、東京のどこにあるのだ」
「罹災してね、どこへ行ったらいいか、まだきまっていないよ」
「そうか、罹災したのか。はじめて聞いた。それじゃ、いろいろ特配をもらったろう。こないだ罹災者に毛布の配給があったようだが、俺にくれ」
私はまごついた。彼の真意を解するに苦しんだ。しかし、彼は、まんざら冗談でも無いらしく、しつこくそれを言う。