Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ふたおもてくらべぼたん
両面競牡丹
酒井 嘉七
Lisez 両面競牡丹 (ふたおもてくらべぼたん) de 酒井 嘉七 (さかいかしち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 12 317 caractères · 25 écrans
あのような日和でございましたので、さすがに、繁華街にある、『でぱあと』の中も、人はまばらでございました。私は、まず、八階まで昇り、京染と帯地の陳列を見せて頂き、それから、七階、六階と歩いては、階段から降りて行ったのでございます。階段に面した側は、丁度、山手とは反対になりまして、天井から、足もとまでがずっと、がらすの窓になり、そこを透して、ほど遠からぬ港の船のいくつかが、段階子を降りて行く目の前に、朧げながら浮んでくるのでございます。窓の向うには、なおも、魔物のような濃霧が、濛々と、何かしら不可思議なものとともに、流れて行くようでございます。漠然とした不気味さに小さな慄えを感じながら、私は階段を静かに降りていたのでございました。と、七階から六階へ通じるところでございましたか、誰も人影はございません。階段の半分を降りきった、折り返しのところで、突然、下から、音もなく昇って来られた方と、危うく衝突する様になって、立ち佇ったのでございます。そして、ふと、対手の方を見上げたのでございますが、その瞬間、われにもあらず、あっと、口の中で叫んだのでございました。