Classiques japonais avec furigana
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なにがわたしをこうさせたか
何が私をこうさせたか
金子 ふみ子
Lisez 何が私をこうさせたか (なにがわたしをこうさせたか) de 金子 ふみ子 (かねこふみこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 191 571 caractères · 383 écrans
何という貧弱な店であろう。余りに目立った貧弱さである。商品の後ろの方に、これもやはり新聞紙を敷いてその上に私は、膝に展げたリーダーを置いたまましょんぼりと座って客を待っているのである。
隣のお爺さんは面白い親切な人だった。いつも酒で顔を赤くほてらしていたが、酒の気がきれると「姐さんすまないがちょっと見ていてくんな」と私に自分の店を任しておいてどこかへ姿をかくした。その間に爺さんは近くの酒屋へ駈け込んで、コップ酒を呷って来るのだった。夜も更けて客足が少くなった時分には、眼鏡越しに皺くちゃな眼をしばたたきながら、商売物の浄瑠璃本か何かを取り上げては、妙な節をつけて小声で語るのが爺さんの癖だった。が、それにも飽きると、
「姐さん、お前さんとこの店は馬鹿に陰気臭いね。まるで化物でも出そうだよ……」などと人のいい笑いを見せながら「これで少しはたいてみな」と、古本の上の埃を払うはたきを私の方へ投げてくれるのだった。
商いがなくていつも退屈している私は自然とお爺さんの話の相手となった。
私は答えるのだった。
「駄目よ、おじさん。いくら埃をはたいても台がないんだから。