Classiques japonais avec furigana
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けんきょう
剣侠
国枝 史郎
Lisez 剣侠 (けんきょう) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 156 961 caractères · 310 écrans
浪之助も塀の節穴越しに、苦笑せざるを得なかった。
(若い武士が打たれるはずはない。わざと勝を譲ったんだ)
そう思わざるを得なかった。
浪之助は娘を見た。
柘榴の蕾を想わせるような、紅い小さな唇が、娘を初々しく気高くしていた。
2
「何だそのような未熟の腕でいながら、傲慢らしく振舞うとは」
こう老武士の窘めるような声が、浪之助の耳へ聞こえてきたので、老武士の方へ眼を移して見た。
娘を横手へ立たせたまま、壮年武士と向かい合い、老武士は説いているのであった。
「たとえどのような伎倆があろうと、世間には名人達人がある、上越す者がどれほどでもある、増長慢になってはいけないのう」
こう云った時には老武士の声は、穏やかになり親切そうになり、顔からも怒りがなくなっていた。
「第一わしのようなこんな老人に、もろく負けるようなそんな伎倆では、自慢しようも出来ないではないか。のう澄江、そうであろうがな」
「まあお父様そのようなこと……もうよろしいではござりませぬか……でも陣十郎様のお伎倆は、お立派のように存ぜられますわ」
藤と菖蒲をとりあわせた、長い袂の単衣が似合って、たけてさえ見えるその娘は、とりなすようにそういうように云い、気の毒そうに壮年武士を見た。