Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

じゅういちやぎさぶろうをかたる

十一谷義三郎を語る

豊島 与志雄

Lisez 十一谷義三郎を語る (じゅういちやぎさぶろうをかたる) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 4 959 caractères · 10 écrans

Aozora Bunko

或る時、母堂の心配そうな打明話によると、眼や顔をふくハンケチが茶色くなり、便所の朝顔も茶色くなり、襯衣も茶色くなり、つまり全身から煙草の脂が吹き出してるらしいとのことだった。それには私も驚いたが、本人は平気だった。徹夜をして、黎明の頃に、バットの真髄が分るのだと云っていた。身辺にまきちらしたバットの空箱の、金の蝙蝠と緑の地紙とが、黎明の光に何とも云えぬ色合を呈し、手の指先が金粉に染められていると共に、恍惚たる感を与えるのだとか。それほど好きだったバットも、肺を病んでから、昨年の初夏の頃以来、殆んど止めていた。「吸うと苦しいから自然にやめた。」と云って淋しい顔をしていた。そして十ヶ月後、春子夫人の手で棺の中に、バットが三箱入れられたのである。

十一谷君は仕事に対して入念だった。「唐人お吉」以後歴史物に手をつけるようになってからは、文字の駆使、表現技法などに、独特の精緻な風格を増してきて、「読者の眼を廻させるスタイルだ。」と或る人に云わせるに至ったが、そればかりでなく、材料の蒐集研究に一方ならぬ苦心を費したものだった。あちこちの古い記録を見て歩いたのは固より、どこで手に入れたか、古い反故るいの一杯つまってる葛籠を幾つか持っていた。