Classiques japonais avec furigana
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じゅうにしこう
十二支考(下)〔全2冊〕
南方 熊楠
Lisez 十二支考(下)〔全2冊〕 (じゅうにしこう) de 南方 熊楠 (みなかたくまぐす) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 251 906 caractères · 495 écrans
古ギリシアやインドの創世紀は金の卵に始まり、世界は金の卵より動き始め、動くは善の原則たり、光明あり労働し利世する日は金の卵に生ず、故に一日の始めに卵を食うは吉相で、ラテン語の諺にアブ・オヴォ・アド・マルム(善より悪へ)というはもと卵より林檎への義だ。古ラテン人は食事の初めに煮固めた卵、さてしまいに林檎を食ったので、今もイタリアにその通り行う家族多し、また古ギリシアの諺にエキス・オウ・エキセルテン、卵より生まるというは絶世の美人を指したので、その由来は、大神ゼウスがスパルタ王ツンダレオスの妻レーダに懸想し、天鵞に化けてこれを孕ませ二卵を産んだ。その一つから艶色無類でトロイ戦争の基因たるヘレネー女、今一つから、カストルとポルクスてふ双生児が生まれたからだとあるが、天鵞形の神に孕まされて生んだ卵は天鵞卵で鶏卵でなかろう。何に致せグベルナチス伯の言のごとく、世界は金の卵から動き始める理窟だから、金の卵の噺から書き始めようとしても、幾久しく聞き馴れた月並の御伽噺にありふれた事では面白からず、因って絶体絶命、金の卵の代りにキンダマ譚からやり始める。
けだし金の卵とキンダマ、国音相近きを以てなるのみならず、梵語でもアンダなる一語は卵をも睾丸をも意味するからだ。