Classiques japonais avec furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Lisez 南国太平記 (なんごくたいへいき) de 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 493 291 caractères · 991 écrans
要は、逃路、逃げる方法――)
小太郎が、じっと、地上を眺めていると
「出た」
と、広岡がいった。小太郎は、一足引いた。久光の一行が、今、二人の立っている畝道から出て来て、近づいて来るのが、頭の中へ、鮮かに描き出された。
広岡は、ぴたりと、堂の板へ、右手をつけて、その手に、一尺八寸の大脇差を抜いて、持っていた。小太郎は、片膝を、地につけて、広岡の脚下から、頭を下げて、丁度、堂の縁側の下から、往来へ現れて来る、久光の一行の脚を見るように、構えていた。
「未だか」
広岡が聞いた。
「うむ」
二人は、少し、顔色を蒼くしていた。
「見えた――松の前――もう二三間」
そこまでいって、小太郎は立上った。と同時に、鉄蹄の響き、人の足音がして――その瞬間、広岡は、往来へ閃き出ていた。そして
「御家のためにっ」
と、叫んだ。
久光は、馬を乗下げようと、馬上で、身体を反らしていた。一人の鷹匠は、馬にぶっつかりながら、周章てて馬の横へ廻った。一人の近侍は、鞘ぐるみ、刀を抜いて――馬上の久光へ斬りかかろうと、片手上段で、飛びかかった広岡の刀を払った。
小太郎は、久光の顔に、狼狽と、恐怖との歪みを見た。