Classiques japonais avec furigana
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こせんのなぞ
古銭の謎
野村 胡堂
Lisez 古銭の謎 (こせんのなぞ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 12 885 caractères · 26 écrans
「これじゃいけないかネ、困った事に今日は金が無いんだ、尤も金が無いと言ったって無銭飲食じゃないよ、この通り、巡礼お鶴じゃないが小判というものはたんと持って居る……」
「いけませんよ、冗談をなすっちゃ、そうでなくてさえ、時々西洋の銀貨や、支那の銀貨を掴まされて、お帳場から叱られるんです。小判なんかで頂いたら、どんな事になるか判ったものじゃありません」
「相すまん、誠に私が悪かった。が、聞いてくれ、斯ういうわけだ。私は古銭を集めるのが道楽でな、家を出る時は、充分金を持って出た筈なんだが、途中二三ヶ所で古銭に引っかかって、とうとうこの通り。私のガマ口には、明治以後のおあしは一銭も無くなってしまった、ハッハッハッ驚いたか」
卓の古銭の上へ、空っぽのガマ口を投り出してカラカラと笑い出しました。
午後一時頃、珍々亭は人の立てこむ時刻ですから、この小喜劇は、たちまち店中の見物になってしまいました。第一、喜劇の主人公なる、この古銭蒐集家の風采が変って居ります。頭こそ左まで禿げて居りませんが、五十五六年配で、山羊髭で、一番贅沢な布地を一番無恰好に裁ったといったような、ダブダブの背広に、風呂敷ほどある大きなネクタイ、マドロスパイプを脂下りにくわえて居ります。