Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

めいじんじごく

名人地獄

国枝 史郎

Lisez 名人地獄 (めいじんじごく) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 149 286 caractères · 301 écrans

Aozora Bunko

……が、またうつむいて針を運んだ。

サラサラと雪のしずれる音。すっかり夕陽が消えてしまった。ヒタヒタと闇が逼って来た。

浪人は一つ欠伸をした。それから内職を片付け出した。

と、傍らの本を取り、物憂そうに読み出した。あたりは灰色の黄昏であった。

「何をお読みでございます?」

「うん」といったが元気がない。「珍らしくもない、武鑑だよ」

二人はそれっきり黙ってしまった。

と、浪人が誰にともつかず、

「どこぞへ主取りでもしようかしらん」

しかし女房は返辞をしない。

浪人は武鑑をポンと投げた。

「だが仕官は俺には向かぬ」

「それではおよしなさりませ」女房の声には力がない。むしろ冷淡な声であった。

「やっぱり俺は浪人がいい」浪人の声にも元気がない。

女房は黙って考えていた。

また雪のしずれる音。……

「その仕立て物はどこのだな?」

「お隣りのでございます」

「隣りというと一閑斎殿か」

女房は黙って頷いた。

すると浪人は微笑したが、それから物でも探るように、

「あのお家は裕福らしいな?」

「そんなご様子でございます」

「ふん」と浪人は嘲笑った。「昔の俺なら見遁がさぬものを……」

――意味のあるらしい言葉であった。