Classiques japonais avec furigana
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ちじょう
地上
島田 清次郎
Lisez 地上 (ちじょう) de 島田 清次郎 (しまだせいじろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 175 250 caractères · 350 écrans
広い路に立並ぶ宏壮な屋並には、喪章に掩われた国旗がどんより澱んだまま動かずに垂れていた。三味の音も鳴物の響も聞えなかった。ただ真夏の強烈な日光がじり/\と照りつけて、この人間の弱小を静かに見下ろしているような圧迫を与えた。春風楼もめっきり寂びて来ていた。女将でさえが、夏の身体のどうにも持ちようのない昼など、よくお光のこつ/\仕事をしている六畳の部屋へ何ということなしにねそべりに来た。杉葉の緑蔭を受けてこの家では一番涼しいお光の部屋は昼寝をするによかったせいもあろうが、そればかりとも言えないものがあった。お光は、自分の十数年来の生活のゆえに、崩御のことに対しても、静かな哀しみを感じこそすれ、今更のように驚く必要は少しも感じなかった。それは死に対する用意が無意識のうちに出来あがっているためであろうか。彼女は心底から「おいたわしいことでした」と思った。そしてあきもせずこつ/\縫物の針を真面目に運ばせた。真夏の濃緑と烈日が彼女にある圧迫を与えたが、静かな彼女の心はそっとその圧迫をやりすごしていた。
「ほんとに今年の夏は嫌なことばかりが多い」女将は青い眉あとの目立つ顔に、仰山らしい表情を浮かべてよくお光に言った。