Classiques japonais avec furigana
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あおいはらふじんのたいつり
垢石釣游記
佐藤 垢石
Lisez 垢石釣游記 (あおいはらふじんのたいつり) de 佐藤 垢石 (さとうこうせき) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 46 298 caractères · 100 écrans
(よもや)
と、思っているところへ、だしぬけにやって来たのであった。
ではあるが、この頃の葵原夫人の釣熱から考えると、当然のようでもある。と言うのは、私が昨日の夕方東京湾口で釣った大鯛を、葵原君の晩酌の肴に持参したからである。鯛は、海神の寵姫であるかも知れない。淡紅の肌に泛んだ紫紺色の小さな斑点は、夜宴のドレスを飾る無数の宝玉のようにも見える。虹の光沢に似て光る二つの腹鰭、円い大きな澄んだ眼、豊満な鱗の下の肉。威あって而も優しい体から受ける形容は、ただ一つ麗艶の言葉に尽きる。しかもそれが、一貫三百匁の大物であった。
「立派ですなア」
葵原夫妻は、笹を敷いて籠の上に在る贈物に、眼を※(「目+爭」、第3水準1-88-85)って讃嘆した。
「私も釣って見たい……」
心の表現を補足しようとするのであろうか、夫人は葵原君の肩を双手で揺った。
「駄目だ――それは、泥亀が月を望むと同じようなものだ」
「私、きっと釣って見せるわ。きっと――」
三人は、卓子の上に置いた籠を囲んで、暫く立ち去り得なかった。
それから、眼玉の潮羹を作った。刺身にもなった。塩焼も出た。アラ煮もこしらえた。