Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Lisez 夏の花・心願の国 (なつのはな) de 原 民喜 (はらたみき) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 152 816 caractères · 310 écrans
私はじっとしていられない衝動のまま、再び外へ出て、病院の方へ出掛けた。病院の玄関先には次兄がまだ茫然と待たされていた。私はその姿を見ると、
「惜しかったね、戦争は終ったのに……」と声をかけた。もう少し早く戦争が終ってくれたら――この言葉は、その後みんなで繰返された。彼は末の息子を喪っていたし、ここへ疎開するつもりで準備していた荷物もすっかり焼かれていたのだった。
私は夕方、青田の中の径を横切って、八幡川の堤の方へ降りて行った。浅い流れの小川であったが、水は澄んでいて、岩の上には黒とんぼが翅を休めていた。私はシャツの儘水に浸ると、大きな息をついた。頭をめぐらせば、低い山脈が静かに黄昏の色を吸収しているし、遠くの山の頂は日の光に射られてキラキラと輝いている。これはまるで嘘のような景色であった。もう空襲のおそれもなかったし、今こそ大空は深い静謐を湛えているのだ。ふと、私はあの原子爆弾の一撃からこの地上に新しく墜落して来た人間のような気持がするのであった。それにしても、あの日、饒津の河原や、泉邸の川岸で死狂っていた人間達は、――この静かな眺めにひきかえて、あの焼跡は一体いまどうなっているのだろう。