Classiques japonais avec furigana
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なつのそうれつ
夏の葬列
山川 方夫
Lisez 夏の葬列 (なつのそうれつ) de 山川 方夫 (やまかわまさお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 60 161 caractères · 122 écrans
その人間の不幸は、だれにも、当人にさえ、どうすることもできない。それを知り、それに耐えることこそ、人間の真の「勇気」なのだ。……
だれとも知れぬものへの呪詛を呟きつつ、いつのまにか彼は眠っていた。妻が部屋に入り、扉を閉めたのはそのあいだだった。
「ただいま」と、妻は大きな声でくりかえして、彼の肩をゆすった。
彼は時計をみた。十一時だった。妻は、まだ外套を着ていた。
「……煙草屋の前に、誰かいなかったか?」
と彼は訊いた。妻は怪訝な顔をつくった。
「べつに。誰もいなかったわ」
「ふうん」
まるで、一つの刑罰から解放されたみたいな、ほっとした、しかしいささかあっけないものを彼は感じていた。
「……いままで、なにをしていたんだ?」と、はじめて妻の顔をみつめて、彼はいった。
「実家にでも行って、さんざんおれの悪口をいってきたんだろう」
「違うわ。私、実家へなんか行かなかったわ」
「じゃ、どこへ行ってたのさ」
「東京の端っこのね、今日はじめて行った公園。私、一日中、そこに立っていたの」
「なに?」
彼は起き直った。「一日中、ずっと立っていたんだって? なぜ?」
「なぜって」妻は困った顔になった。