Classiques japonais avec furigana
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やまとこじふうぶつし
大和古寺風物誌
亀井 勝一郎
Lisez 大和古寺風物誌 (やまとこじふうぶつし) de 亀井 勝一郎 (かめいかついちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 108 647 caractères · 215 écrans
「以和為貴」とは、国家に対する最大の危険信号であった。
しかし「和」は、政治的平和だけを意味しているのではむろんない。太子の念じ給える「和」とは超政治的な「和」、究竟「涅槃」であったと思う。僕はこの一語に宿る深い夢を思いつづけた。それは万民の祈りを基石としてうち立てらるべき無形の理想国にちがいなかった。「世間虚仮、唯仏是真」と言われたときの「真」の国、浄土であり天寿国であったと申してもよいであろう。「和」とは菩薩の見果てぬ夢だ。だが太子にとって、「和」は超政治的観念であるとはいえ、それは政治という現実の中の最も厄介な現実の只中に実証されねばならぬものであった。涅槃は地上の悪を回避せる彼岸に求めらるべきでなく、地上の酸鼻そのものの裡に念ぜられる云わば誓願なのだ。「以和為貴」とは憲法の条文となる前にまず端的な祈りであり、仏の前、民の前に言い継ぎ語り継ぐべき誓願であったろう。その現実性を失うまいとしたところに、太子の異常な努力があったように思われる。
一切衆生は悉く仏となる筈だが、しかし悉く仏となる時は来ない。人間の迷妄は無限、地獄は永遠である。しかもその故にこそ誓願は絶えず、菩薩の夢は永遠なのではないか。