Classiques japonais avec furigana
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てんしゅかくのおと
天主閣の音
国枝 史郎
Lisez 天主閣の音 (てんしゅかくのおと) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 38 941 caractères · 79 écrans
辰巳の二戸前というやつだ。主人の威光益々加わり、眷族参集という瑞象だ。おやおやあれは何だろう?」
俄に香具師は眼を見張った。
土蔵の横手に見たことも無い、変な建物があったからであった。屋根が陽を受けて光っていた。この時代に珍らしい硝子張りであった。屋根が硝子だということが、先ず香具師を驚かせた。建物は正しい長方形で、間口は凡一間半、それに反して奥行は、十間もあるように思われた。鰻の寝所とでも云い度いような、飛び離れた長い形であった。建物は青く塗られていた。
「驚いたなあ」と香具師は云った。「こんな建物は家相には無い。折角の瑞象をぶち壊している。一体どうしたというのだろう」
万般が法則に叶っていて、それ一つだけが破格だけに、彼には不思議でならなかった。
「納屋で無し厩舎で無し、湯殿で無し離座敷でなし、どういう用のある建物だろう?」
どう考えても解らなかった。
「不躾乍ら訪問して見よう」
彼はこう思って丘を下りた。表門は厳重に鎖されていた。しかし潜戸が開いていた。構わず内へ這入って行った。森閑として人気が無かった。可成り大きな屋敷だのに、人の姿の見えないというのは不思議と云えば不思議であった。