Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
しっちょうき
失蝶記
山本 周五郎
Lisez 失蝶記 (しっちょうき) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 22 072 caractères · 44 écrans
一
一
紺野かず子さま。
この手記はあなたに読んでもらうために書きます。こういう騒がしい時勢であり、私は追われる身の一所不住というありさまですから、あるいはお手に届かないかもしれません。また、終りまで書くことができるかどうかもわかりませんが、もしお手許に届いたばあいには、どうか平静な気持で読んで下さるよう、はじめにお願いしておきます。
いま私のいるところは、城下町から一里ほどはなれた山の中で、かなり近く宇多川の流れを見ることができます。西山での不幸な出来事、あの取返しようのない出来事があってから約十日、私はつぎつぎと隠れがを求めてさまよい歩き、三日まえからこの家の世話になっていますが、おそらく、またすぐに出てゆかなければならなくなるでしょう。いどころも、人の名もそのままは書きません。どういうことで迷惑をかけるかもしれないからです。しかしあなたにはおよそ推察ができるように記すつもりです。
季候はすっかり夏めいてきました。今朝はやく歩きに出たら、山の林の中で石楠花の蕾が赤くふくらんでいるのをみつけ、胸の奥がせつなく、熱くなるように感じながら、暫く立停って眺めていました。