Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しっちょうき

失蝶記

山本 周五郎

Lisez 失蝶記 (しっちょうき) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 22 072 caractères · 44 écrans

Aozora Bunko

人の姿はどこにもありません、気がついて崖の上を見あげると、あなたがこちらを覗いておられたのです。

「失礼しました」と私は云いました、「いまそちらへまいります」

刀を鞘におさめて私は扇を拾いました。それは薄く墨でぼかした地に夕顔の花が描いてあり、三分の一のところで二つに切れ、要でつながっているだけでした。自慢の腕が臆病の証しをしたか、私はそう思って苦笑しました。――それからあなたのところへいって、耳が聞えないために、狼藉をしたことを詫び、自分の名を名のって切れた扇を差出したのです。あなたは笑ってかぶりを振り、扇を受取ってからなにか云いたそうに、侍女の顔をごらんになった。それで私は矢立と手帳をあなたに渡したのです。

「耳がだめになってから、いつも持って歩いているのです」と私は云いました、「よろしかったらどうぞそれへお書き下さい」

あなたは会釈をして、扇は落した自分が悪いこと、詫びは自分のほうで云うべきであると書いて、手帳を戻されました。私はそれを読み、紺野かず子という署名を見て、初めてあなただということに気づき、思わず声をあげてしまいました。

「これはこれは、ふしぎなところでおめにかかりますね」