Classiques japonais avec furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lisez 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 10 286 caractères · 20 écrans
「女ッ、逃げるかッ」
バタバタと追う物音、
「あッ」
若い女の声は絶え絶えでした。夢心地の頼門は本能的に藪蔭を飛出すと、声する方へ駆けつけて居ります。
其処に展開したのは、二人の男と、一人の女の、死物狂いの争いでした。男二人は武家姿――それも頼門には見覚えの家来の身扮ですが、顔は全く違います。
追われる女は十八九、それが二人の男の手をくぐって逃廻るごとに、帯も解け、袖も千切れ、最後には袷も剥がれ、襦袢もられて、殆んど半裸体のまま、傷つき倒れては起き上り、起き上っては小突き廻され、真に命を賭けて争い続けて居るのでした。
が、娘の力は尽きて、今は頼み少く見えました。その抵抗は猛烈で、寧ろ獣的にさえ見えましたが、二人の男の攻撃は、野蛮で無恥で、狂暴で本能的で、互に血みどろになり乍らも、その血の色に鼓舞されて死ぬまでも争い続けそうに見えたのです。
やがて力尽きた娘は、草の上に突き轉がされました。赤い下着、白い四肢、不思議な躍動のうちに、最後のものを守る争いを見ると、三万八千石の御曹司頼門の血は、勃然として正義感に沸り始めたのです。
「己れッ」
空き腹から、どうすればそんな声が――と思う叱咤と共に、半纏をかなぐり捨てて、猛然として飛付きました。