Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ちぎりきぬ

契りきぬ

山本 周五郎

Lisez 契りきぬ (ちぎりきぬ) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 32 757 caractères · 66 écrans

Aozora Bunko

あとで考えると、まっすぐにそこへいったのは死ぬつもりだったかもしれない。そして、もしそのときその人が通りかからなかったら、本当に死んだかもしれないと思う。――その人は越前の絹物商だそうで、国へ帰るため城下の宿を早く立って来た。そこへ来かかったときまだ供の者は提灯を持っていたが、川岸の草の中に坐っているおなつをみつけ、はじめは狂人かと思ったそうである。

おなつは意識なしに云ったらしいが、自分は猿山の湯治場の者で、町から帰る途中悪者に遭って着ていた物を剥がれた。そんなふうに云ったのである。――猿山という地名が口に出たのは『みよし』の女あるじからよく話を聞いていたのと、その話に聞いた宿へゆけばなんとかなるという、漠然とした考えに、支配されたからのようだ。

「それでは道順だから、猿山まではゆけないが二俣まで送ってあげよう」

その絹物商人はおなつの言葉を信じてこう云った。そして下着一枚で顫えているのを見て、供の者に挾箱を下ろさせ、中から自分の着替えを出して着せたうえ、なお供の者の雨合羽を上から掛けて呉れた。

「これはあげてもいいのだが、もし気が済まないようだったら、福井城下の角屋市兵衛あてに送って下さるがいい、しかしこのまま着捨てにしてくれていいのだから」