Classiques japonais avec furigana
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まごしちとずんど
孫七とずんど
山本 周五郎
Lisez 孫七とずんど (まごしちとずんど) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 15 189 caractères · 30 écrans
五
五
まさしく敵は城門をひらいて斬って出た。寄せ手の兵も鬨をつくって突込んだ、ゆるやかな丘の起伏と、かすかに青みはじめた草原のつづく屈竟の戦場である、両軍の兵は剣と槍をひらめかして、濁流のあい寄るように衝突した。ちょうどその戦場の中ほどに、一本の八重桜が立っていた、淡い牡丹色の花がまっさかりで、樹蔭が暗くみえるほど団々たる花毬を重ねている、そのまわりで槍や刀がきらきら光り、敵も味方もごちゃごちゃになって戦っていた。奇妙にその桜のまわりがいちばん激しい、少し脇のほうへ移るかと思うと、まるで相談したようにすぐまた集って来る。
「これは面白いな」孫七郎は丘の上から見ていて、さも興ありげに呟いた、「どういうわけであんなに桜のまわりへ集るのだろう、もっと脇へ寄れば足場も広いのにさ、あれはつまり、合戦をするにも花蔭などのほうが景気がいいというわけかしらん」
そのひと合せが終るまでかれは丘の上から動かなかった。それはまださぐりいくさだった、敵は城のほうへひき寄せようとするし、味方は城兵をおびきだそうとする、いつでも決戦の含みはありながら、まだ相互にちからの度合をはかっている、そういう戦だった。