Classiques japonais avec furigana
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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
Lisez 完本 たぬき汁 (たぬきじる) de 佐藤 垢石 (さとうこうせき) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 133 158 caractères · 273 écrans
私ら子供の時から、この辺ではただ、かもめとばかり呼んでいました。それが、みやこ鳥とは、ほんとうに嬉しい話を聞くものでした。私らが知らないくらいですから、神田川の岸の船宿の船頭や、柳橋の芸妓など誰も、わが土地にみやこ鳥がいようとは、思っていないでしょう。
と、嘘ではないかとばかり、驚いた風であった。老女将は、さらに、
この鳥は、幾十年となく秋の終わりの寒い頃になると、私方の石垣の下へきて遊んでいる。江戸前の海が荒れてでもいるかと思えるような風の強い日には、殊に群れの数が多い。そして終日どこへも行かないで、水上署の交番とこの石垣がはさんだ水の上に遊んでいる。夜は沖へ帰って行くこともあるけれど、大抵は私のところの母屋の屋根の甍に幾つか頭を並べて眠るのである。
私らは吾妻橋から上手の隅田川にばかりみやこ鳥がいて、大川にはいないものと思ってきた。それに、近年言問あたりにも、みやこ鳥の姿が見えなくなったという話を聞いて、淋しく思っていたのであるが、我が家の前にもみやこ鳥がいるとは、懐かしい。
このほど、この屋根に一羽のかもめが死んでいた。では、改めて前の石垣の傍らに『みやこ鳥の塚』