Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

いえ

家

島崎 藤村

Lisez 家 (いえ) de 島崎 藤村 (しまざきとうそん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 141 411 caractères · 285 écrans

Aozora Bunko

その晩、幸作は若旦那の家の方へ寝に行った。

復たポカポカする季節に成った。三吉が家から二つばかり横町を隔てた河岸のところには、黄緑な柳の花が垂下った。石垣の下は、荷舟なぞの碇泊する河口で、濁った黒ずんだ水が電車の通る橋の下の方から春らしい欠伸をしながら流れて来た。

この季節から、お菊やお房の死んだ時分へかけて、毎年のように三吉は頭脳が病めた。子を失うまでは彼もこんな傷みを知らなかったのである。半ば病人のような眼付をして、彼は柳並木の下を往ったり来たりした。白壁にあたる温暖い日は彼の眼に映った。その焦々と萌え立つような光の中には、折角彼の始めた長い仕事が思わしく果取らないというモドカシさが有った。稼ぎに追われる世帯持の悲しさが有った。石垣に近く漕いで通る船は丁度彼の心のように動揺した。

三吉は土蔵の間にある細い小路の一つを元来た方へ引返して行った。彼はこういう小路だけを通り抜けて家まで戻ることが出来た。

お俊の母親が彼を待受けていた。

「姉さんが先刻から被入って、貴方を待ってますよ」

とお雪は長火鉢の傍で言った。煙草を吸付けて、それを嫂にすすめていた。