Classiques japonais avec furigana
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ならしげざっぴつ
小出楢重随筆集
小出 楢重
Lisez 小出楢重随筆集 (ならしげざっぴつ) de 小出 楢重 (こいでならしげ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 334 351 caractères · 657 écrans
暑い日の海水浴は水の美しき誘惑には敵しがたいけれど、そのあとの皮膚の感触位嫌なものはない。私は真夏でも熱い茶と熱い珈琲と温浴を愛する。汗のあとの湯上りの浴衣の触覚にこそ夏の幸福は潜んでいる。
私は従って高山や高原への避暑を好まない。折角の夏の味を寒い処にいて袷でも朝夕は寒い位ですよといった自慢はして見たくない。
時に雨つづきの、もう一段と夏になり切れずにすむ夏があるものだが、私は何か天変的な恐怖をさえ感じる。
雑誌社の往復はがきはしばしば貴下の新案避暑法はといった事を註文してくる。
私は家族の者を海へ泳ぎに出しておき、一人画室のソファでのうのうと寝ころびながら、萎びた朝顔を眺めて見たり、仕事に夢中になっていたりさせてもらう方が、私にとっては幸福な避暑法だといっておく。
芸術と金といえば大変仲の悪いものの如く聞こえるが、その愛するという心の動き方については殆んど同じ三昧境を得ているある老人があった。その老人は金と女の道楽といってもむしろ性慾の道楽という方が近いかも知れなかった。金と性慾、何んと下卑たものではあるが、しかし彼は常に暗い旧家らしい奥座敷の籐むしろの上に机を据えて、毎日朝のうちは金の勘定をする事にきめていた。