Classiques japonais avec furigana
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ならしげざっぴつ
小出楢重随筆集
小出 楢重
Lisez 小出楢重随筆集 (ならしげざっぴつ) de 小出 楢重 (こいでならしげ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 334 351 caractères · 657 écrans
葛の葉の裏の白さは初秋の空白を示している。私の画室の近くは、今この葛の葉で全く蔽われている。
去年の初秋のころ、私の家には「銀」と呼ぶ白猫がいた。その眼は金色で、尾は狐の如く太く地に曳いていた。全身は綿の如く白く柔軟だった。毎朝、彼女は犬の如く私に従って松原を散歩した。銀は葛の葉のしげみへ隠れて私を待つのだ。白い尻尾が左右に動いているのが見える。私が近づくと彼女は妖魔の如く、音もなく高く飛び上って、また次のしげみへ隠れて私を待つ。
銀はその後、勝手に一人、この叢へ遊びに行くようになったが、私がその名を呼んで手を叩くと、彼女はどこからともなく私の足もとへ直に帰って来た。ところが或日の夕方、私が如何に手を叩いても銀は現れないのだ。
私はそれから、この葛の葉の蔭に白い紙片が落ちていても、銀かと思って立ち止まった事がしばしばであった。
フランスなどの四季の変化は甚だ緩慢で、よほど注意していないと秋にいつなってしまったのかわからない事さえある。いつとはなく次第々々に冬が深くなって行く。
ところが日本の四季の変化は急激で非常にはっきりしている。土用で鰻を食べたかと思う間もなく立秋である。