Classiques japonais avec furigana
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しょうせつ えんちょう
小説 圓朝
正岡 容
Lisez 小説 圓朝 (しょうせつ えんちょう) de 正岡 容 (まさおかいるる) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 163 270 caractères · 325 écrans
いおうならこの鐘の音いろも、芝居噺のせりふのとき新内流しの合方にまじって楽屋で鳴らされる銅鑼の音とは比べものにもならないほど野暮でつまらなかった。第一、いってみればそこには活きた人間の情や心持というものを滲ませている何物もなかった。てんで次郎吉には必要のなさ過ぎる冷静で峻厳な世界の「音」ばかり「声」ばかりだった。
「……けッ……」
ただ「けッ」とのみいいたかった、ほんとうにいま次郎吉は。
二
いつ迄、暗闇の中に愚図々々してもいられないので渋々庫裏のほうへ取ってかえすと、ちょうど庭下駄を突っかけて義兄の玄正が自分を探しにでようとしているところだった。薄ら明りの中に半面影隈取られて冷たく浮き出している尖った義兄の顔は、自分たちとは全く世界を異にしている人々だけの持つ厳しさだった。毎度々々のことながら取っ付けないものをそこに感じた。
「和尚様御食事じゃ。サ、早う給仕」
そう冷淡に(と次郎吉にはおもわれた)いい捨てて踵を返すと、侘びしい灯の流れているほうへ、真黒い衣を鋭くひるがえしながらとつかはと消えていってしまった。
時分時だというけれど、自分たちの住んでいた町家のようにお汁の匂いひとつただよってくるでもない。