Classiques japonais avec furigana
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こうじょうさいぼう
工場細胞
小林 多喜二
Lisez 工場細胞 (こうじょうさいぼう) de 小林 多喜二 (こばやしたきじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 91 234 caractères · 184 écrans
五年刑務所にいて、やっとこの正月出てきたんだから、今年の正月だけはシャバでやって行きたいと云っていた。――俺はそのお爺さんと寝てやっているうちに、すっかりヒゼンをうつされていた。それで、この六十日目に入るお湯が、俺をまるで夢中にさせてしまった。
そこは独房とちがって、窓が低いので、刑務所の広い庭が見えた。低く円るく刈り込まれた松の木が、青々とした綺麗な芝生の上に何本も植えられていて、その間の小径の、あちこちに赤い着物が蹲んで、延び過ぎた草を呑気そうに摘んでいた。黒いゲートルを巻いた、ゴム足袋の看守が両手を後にまわして、その側をブラ/\しながら何か話しかけていた……。夕陽が向う側の監獄の壁を赤く染めて、手前の庭の半分に、煉瓦建の影を斜めに落していた。――それは日が暮れようとして、しかもまだ夜が来ていない一時の、すべてのものがその動きと音をやめている時だった。私はそのなごやかな監獄風景を眺めながら、たゞお湯の音だけをジャブ/\たてゝ、身体をこすっていた。ものみんなが静かな世界に、お湯のジャブ/\だけが音をたてゝいるのが、何かしら今だに印象に残っている。