Classiques japonais avec furigana
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げんじゅつてんまたろう
幻術天魔太郎
野村 胡堂
Lisez 幻術天魔太郎 (げんじゅつてんまたろう) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 45 616 caractères · 90 écrans
そのとき、
「上さまにご無礼があってはならぬ、拙者がご案内もうしあげたは、天魔太郎のニセ上さまで、上段の間にのこっておられる上さまこそ、まことの上さまに相違ない」
廊下をかけてくる松平伊豆守、さすがにあわてておりました。伊豆守ほどの智恵者も、あやうくほんものの将軍家光をしばらせるところだったのです。
ニセ家光のさわぎはどうやらぶじにすみました。天魔太郎の幻術でも、これだけおおぜいでかためられると、よういには手がだせません。
あくる日は利根川のわたしをこして、古河まで八里の道を、人間の堤をこさえて家光を守護し、夕方までに本多大内記五万石の城に入りました。
ここに入れば、将軍家光のからだは、まことに安心、どんな幻術も、ここまで手がとどくまいと思いこみました。が、天魔太郎にはそれの上を越す、ふしぎな術がたくさんあったのです。
さいしょは、城のやぐらを守る、見はりのものがさわぎはじめました。
「た、大へん、大蛇だッ」
夕明りにすかしてみると、何十メートルともしれぬ、こがね色の龍が一頭、城の天守をグルグルとふた巻半まいたうえ、古木のような首を将軍家光のご座所をもうけた天守閣の下の大広間のまどへ、ヌッとつっこんで、カッとひらいた口から、火焔のような舌をペロリペロリと吐くのです。